ジャン・バニエという人
ここ数ヶ月、めったにないくらい勉強している。
卒業論文のためなのだけれど、テーマが難しい。
指導教官に教えられた、ある実践的な思想家を取り上げようと思っている。
ジャン・バニエという人だ。
この人は、障がい者と健常者が共に生活するコミュニティーをフランスではじめ、それにラルシュ(L'arche:「ノアの方舟」の意味)という名前をつけた。
この人の思想が注目されるべき大きな理由の一つが、健常者が障がい者を助けるという"上から下へ"ではなく、共に「人間らしさ」についての探求をおこなう共同体として
あるということだ。
それは素晴らしいけれどとても難しいことだと思う。
日本のような能力主義社会では、「〜できない」という「不」可能・「無」能力は認められづらい。そんな中で、「〜できない」人びとである、(と社会では考えられている)障がい者と共に生きる、彼らから学ぶという思想や実践は、なおさら認められづらいだろう。
しかし、障がい者を排除しない、もしくは彼らと健常者とが学び合うことのできる社会は、成員すべてにとって生きやすい社会だと思う。
少なくとも、すべての人間が歳をとる。
上野千鶴子が「齢(=弱い)を重ねる」と表現していたけれど、みんな、「〜できな」くなるかもしれないリスクを抱えているのだ。
弱者に対する共感を欠いた社会
自分が弱者になることへの想像力を欠いた社会
はとっても恐ろしいと思う。
そんな社会から少しでも遠ざかるためにバニエを学ぼうと思う。